絵で読む紫煙・毒煙「大東亜幻影」─日本の戦争と煙草・阿片・毒煙
久保井規夫 (著)
104ページ
ISBN-10: 4806805726
ISBN-13: 978-4806805724
発売日: 2006/12/10
久保井規夫(くぼい のりお)
1967年、香川大学教育学部を卒業し、大阪府公立学校教員として勤務。 「同和」(人権)教育研究団体の役員を歴任。2003年、摂津市立第二中 学校教諭を最後に退職。現在、桃山学院大学講師。APHC(アジア民 衆歴史センター)主宰。平和・人権の教育実践報告や著書は多数。『図 説 病の文化史 虚妄の怖れを糺す』『図説 食肉・狩漁の文化史』『絵 で読む 大日本帝国の子どもたち 戦場へ誘った教育・遊び・世相文化』 『絵で読む 紫煙・毒煙「大東亜」幻影 日本の戦争と煙草・阿片・毒煙』 (以上、柘植書房新社)『わかりやすい日本民衆と部落の歴史』『わか りやすい日本民衆の歴史と朝鮮』『朝鮮と日本の歴史』『江戸時代の被 差別民衆』『近代の差別と日本民衆の歴史』『戦争と差別と日本民衆の 歴史』『図説朝鮮と日本の歴史 光と影』『地下軍需工場と朝鮮人強制 連行』『カラー図版日本の侵略戦争とアジアの子ども』『教科書から消 せない歴史』『消され、ゆがめられた歴史教科書』(以上、明石書店) などの著作。
本書では、戦前・戦時には、嗜好品として広く定着していた煙草文化を通して、帝国日本が東アジアに展開した戦 争を眺めることとした。帝国日本の戦争が煙草の紫煙に映ろうのは、煙草が、国家収益のために専売制とされ、製造 ・販売に国家権力が関わってきたからである。戦時には、兵士のために軍用煙草や慰問煙草が登場した。銃後では、 節煙・購買制限が行われた。さらに、戦場の皇軍(日本軍)には、大元帥であった天皇から、しばしば慰労・恩賞と して「御賜の煙草」が下賜されたものである。広く庶民にまで煙草の嗜好が広がっていたため、煙草には戦争賛美・ マッチ 協力の標語が入れられた。戦場の兵士に送られた慰問袋には煙草も入れられた。火付けの燐寸も同様に戦時色が表れ る。国家総動員体制のためである。日本の企業は、中国へ燐寸を輸出し、大きな利益を得ていた。本書では、煙草と ともに、燐寸もとりあげることとした。
目次
はじめに 煙に映ろう戦争............................................................................................................5
第一章 紫煙、「大東亜」に燻る .............................................................................................9
第一節 嗜好としての煙草
(一)一服の嗜好で定着 (二)日露戦争で専売制 (三)昭和戦前の紙巻煙草
第二節 戦場の紫煙
(一)戦意高揚の煙草包紙 (二)戦時に発売・改名された煙草 (三)煙草カードに見る変化
第三節 植民地の煙草
(一)朝鮮の煙草の栽培と専売 (二)台湾の煙草の栽培と専売
第四節 「大東亜」幻影の紫煙 (一)旧満洲での煙草 (二)中国・占領地での煙草 (三)日本の侵略と東亜煙草社
第五節 日本燐寸、「大東亜」幻影
(一)燐寸は中国輸出の花形 1国内向け燐寸 2中国向け燐寸 3アジア各地向け燐寸 (二)燐寸に映ろう戦争 (三)植民地の日本燐寸
第二章 もう一つの紫煙は阿片...................................................................................................61
第一節 「阿片戦争」と日本
(一)阿片は毒にも薬にもなる (二)アジア侵略の「阿片戦争」 (三)日本の阿片統制の始まり
第二節 台湾領有と阿片
(一)台湾の阿片中毒 (二)国産阿片の増産と阿片王
第三節 日本による「阿片戦争」
(一)隠蔽された日本の阿片密売 (二)生きた屍の阿片窟
第四節 朝鮮での阿片中毒と専売制
第五節 旧満洲・占領地での阿片栽培
(一)「日の丸」の下、「大東亜阿片圏」(二)最大阿片地域の熱河省 (三) 蒙疆(内蒙古)も阿片拠点に
第三章 戦場をおおう悪魔の吐息 ............................................................................................79
第一節 毒煙(ガス)兵器の登場
第二節 毒ガス兵器の恐怖
第三節 防御あっての毒ガス戦
第四節 台湾霧社事件に毒ガスの影
第五節 旧満洲は実戦訓練場
第六節 化学戦教育隊での訓練
第七節 中国での日本軍毒ガス攻撃
第八節 毒ガスの終焉と責任
終わりに アジア民衆歴史センター図録の発刊 ..................................................................96