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図説 食肉・狩猟の文化史 高ヒット

図説 食肉・狩猟の文化史―殺生禁断から命を生かす文化へ

久保井 規夫 (著)
 302ページ
ISBN-10: 4806805505
ISBN-13: 978-4806805502
発売日: 2007/03/25

 

本書は、牛馬を中心に、食肉をめぐる狩猟・漁労・畜産の労働・歴史・民俗について著述した。食肉・畜産については、近代以降、食生活の需要も高まり、現在も、輸入の食肉・乳製品と競合して、生産に大きな変化がある。狩猟・漁労については、今日、往時の前近代からの伝統的な労働・習俗が途絶してしまったり、僅かに伝統文化・観光資源として保存されている場合がある。何とか、伝統的習俗・伝承が把握できるうちにと考えて、本書で記録しておくことにした。例えば、狩猟では、アイヌ・マタギ・山窩・鷹匠、漁労では、鵜飼い・家船衆・海女(国内・朝鮮の済州島)・捕鯨についても掲載した。また、牛馬・食肉に関する歴史と習俗を知ることは、現在の私たちの生活・文化・思考に役立つ。このような、身近な食生活と関わる事なのに、実際は自らが直接知らない生産現場や知ることが困難となった事象・習俗などを理解するには、絵や写真を通しての「百聞は一見に如かず」である。適切な図版・解説を提供するために、資料の調査研究・撮影などに努めた。

 

第一章  現在の食肉の生産

第一節  流れ作業と清潔第一の食肉センター

☆流れ作業の「牛の解体」に技術員の技が光る 1牛に番号を付ける  2牛も人も、体を清潔にする  3一頭ずつ前進  4ノッキング銃で失神させる  5 体を滑り出させる  6直ちに放血させる  7前後ろの蹄・頭・尻尾を切り離す  8体の腹側から、上から 下へと、皮を剥ぐ  9皮の下から白い肌が現れる  10胸割りして、内蔵を抜き出す  11脊髄除去と背割り   12枝肉を病理検査し、検印  13内臓の分別と処理  14脳髄の衛生検査  15頭部を処理  16骨などの運び 出し  17枝肉の衛生・品質検査  18枝肉の出荷

第二節  「鳴き声以外は無駄にしない」......牛からできるさまざまな製品

 

第二章  狩漁の歴史と習俗

第一節  絵で見る狩漁・畜産の始まり

1船で漁獲  2見返りの鹿  3縄文の多様な食肉  4豚と猪  5猪を追う犬  6埴輪の鶏  7馬に乗る

第二節  狩猟の伝統民俗

(一)シシ(鹿・猪)と共に  1猪を捕らえた狩人  2鹿の毛皮を着た男  3鹿の皮剥ぎ  4鹿を呼び寄せ る鹿笛  5猪垣の跡  (二)マタギの狩猟習俗  1マタギの呼称  2熊狩りの出で立ち  3熊のケボカヒ  4最後の越後マタギの集落  (三)鷹狩りの始まり  1鷹狩りの広まりと中断  2「矢形尾の真白斑の鷹」

第三節  漁労の伝統民俗

(一)素潜りと海女の磯笛  1海女のルーツ  2海女の出漁  3磯潜りの技術  4韓国済州島の海女  5竹 島に出漁した志摩の海女  6磯があれば潜った  7能登の舳倉島の海女たち (二)家船衆の習俗......瀬戸内海全域に  1家船衆のルーツ  2「御免」で、お城も通った  3能地の船出 ......陸に子供を残して  4家船衆の伝統の漁法  手繰網漁法/打瀬網漁法/一本釣りと延縄釣り  5元家船衆 の箱崎(広島県因島市土生町)  6元家船衆の小坂(香川県丸亀市塩飽諸島本島) (三)漁民打ち揃っての鯨漁  1江戸期からの伝統の鯨漁  2漁民総力を挙げての鯨漁  3銛を打ち込み、 波しぶき  4潮噴く鼻を斬る......「刃刺」  5浜に引き上げ、鯨の解体......まず「皮を捌く」  6骨も髭 も捨てる所なし......「骨を割る」  7自由捕鯨の終末......捕鯨船団の終焉

第四節  船神・海神......漁民の信仰・習俗

(一)船の守護神......船霊様  (二)漁網の大漁神......恵比須様  (三)厄払いの神......陰陽道の呪術信仰 1流れ仏  2方忌み・方違え  3魔(厄)除け  (四)航海の神......金毘羅信仰   (五)神功皇后伝説と 漁民

第五節  伝統の川漁

(一)川漁の伝統漁法  1筌(もじ・うけ)  2簗(やな)  3魞(えり)  4蜆採り(島根市宍道湖) (二)「面白うて、やがて悲しき鵜飼いかな」松尾芭蕉  1鵜飼いの伝承地  2鵜飼いの伝統技

第六節  殺生禁断の信仰と漁民

(一)岩落の鵜飼い (二)「阿漕なこと」の喩え  (三)世阿弥の三卑賤

第七節  謎のサンカ

(一)サンカと川漁  (二)サンカと竹細工  (三)「山窩」の表記を巡って  (四)「山窩」の犯罪なるも の  (五)山窩と差別

第八節  アイヌ、狩漁の古民俗

(一)古の狩漁の民俗  ☆熊送り、祭祀に血肉を供える  (二)和人の支配と交易  1松前藩の支配  2 「江差浜鰊漁之図」松前檜山屏風  3南極を走るアイヌの犬橇


第三章  馬の歴史と馬頭観音

第一節  馬の来た道

(一)絵馬に願を懸ける  (二)天の斑駒の逆剥ぎ・生剥ぎ  (三)乗馬の習俗と騎馬民族  1馬形埴輪・ 馬具類の副葬 2騎馬民族の渡来

第二節  働く馬として

(一)荷役・農耕の役馬  (二)名馬良し、軍馬哀れ  1鎌倉武士の馬 2野馬追い  3藤崎八幡宮の走馬 神事(熊本市)  4戦場へ送り出される馬  5「執った手綱に血が通う」

第三節  馬が合う、猿と馬

(一) 水神の猿と厩信仰  (二)馬の祈祷師、猿曳き

第四節  馬の病気と馬医者

(一)緋の衣の魔女が馬を襲う  (二)近代医学の先達、馬医者

第五節  春の初めの春駒と竹馬.

(一)春駒と養蚕の女神  (二)千秋万歳と竹馬  (三)祝福芸の伝統を持つ春駒  1佐渡の春駒  2沖縄 舞踊としての春駒  3にぎやかな湯浅の春駒

第六節  馬頭観世音菩薩と道祖神


第四章  牛の歴史と牛頭天王

第一節  牛を生贄とする祭祀

(一)奇祭、太秦の牛祭  (二)漢神は韓神、牛を生贄

第二節  鬼か神か、牛頭天王

(一)地獄の牛頭鬼・馬頭鬼  (二)服わぬ者を異形の「鬼」とした

第三節  神仏と牛

(一)季節を祈る土牛童子  (二)神仙と牛頭鬼

第四節  祇園精舎の守護神、牛頭天王

(一)病と死を恐れた、祇園信仰 (二)天皇大帝、牛頭天王  (三)雨乞いと牛頭天王

第五節  家畜としての牛

(一)働く牛(役牛)  1牛車  2牛耕と堆肥 (二)乳牛と肉牛  1乳製品は最高の醍醐味  2食肉の始まり、「我が身に八重花咲く」  3聖なる牛塚の影


第五章  殺生肉食の禁令

第一節  仏教と殺生肉食の禁令

(一)神仏習合と殺生・肉食禁断   (二)殺生・肉食の禁令と結界碑

第二節  肉食は当然の習俗

(一) 肉食を否定しない神仏  (二)精進料理の本音、五辛の誘惑  (三)服わぬ者の食文化 1「蝦夷」の山海料理  2琉球(沖縄)の畜産と肉食   (四)キリスト教伝来と肉食  1隠れ切支丹と 鯨漁  2肉料理を広めた宣教師  3切支丹禁止令と肉食禁止

第六章  食肉と「穢れ」の習俗

第一節  牛肉は健康の素

(一)牛黄の妙薬をめぐる人々  (二)牛馬飼養所と養生肉

第二節  江戸時代の食肉文化

(一)最初のブランド、近江牛  (二)放し飼いの犬は食用  (三)幕末の牛鍋食い

第三節  「穢れ」と差別が重なる

(一)「穢れ」差別が作る者へ   (二)餌取りは「穢多」か  (三)死牛馬処理が「穢れ」とされた (四)「穢れ」と「祓い」  1葬儀と服喪  2結界碑「不許触穢者」  3猿曳きの「牛馬屋祝文」 第四節  海外からの肉食の習俗 . (一)中国・朝鮮の肉料理   1朝鮮通信使への饗応食  2長崎の卓袱料理は中華風 (二)南蛮料理は肉料理   (三)居留地で、屠牛と肉食  (四)将軍お膝元での屠牛と肉屋


第七章  肉食の夜明け

第一節  兵食からの食肉普及

(一)強兵には肉食を  (二)ヒットした牛肉大和煮缶詰

第二節  牛鍋食わぬは開けぬ奴

(一) 牛鍋は文明開化のシンボル  (二)「牛鍋屋いろは」大繁盛  (三)肉食普及の啓蒙活動 1明治天皇、肉食を遊ばさるる  2「解放令」の啓蒙もすればよかった  3啓発・教育の努力

 

第八章  屠場なければ食肉なし

第一節  食肉生産をする屠場

(一)屠場開設の広がり  (二)「人家懸隔の地に開設」  (三)屠場と被差別部落 (四)屠場と創られた被差別部落

第二節  生産増と屠場の公営化

(一)日露戦争と屠畜の増大  (二)「屠場法」「家畜市場法」の登場

第三節  肉屋から庶民の家庭へ

(一)肉屋は牛鍋屋兼業から  (二)行商で庶民の家庭へ広まる  1警察による営業取締り  2行商も、天 秤棒から自転車へ


第九章  畜産業の始まり

第一節  政府が畜産を奨励

(一)「家畜なき奇国」からの脱皮 (二)明治政府の畜産勧奨施策  1畜産の利益大と勧奨  2家畜市場の組織づくり  3畜産勧奨の事例  (1) 牛馬の牧場を経営  (2)西日本でも、本格的な畜産業

第二節  朝鮮牛・青島牛の輸移入

(一)「併合」前の朝鮮牛の輸入  (二)韓国「併合」と朝鮮牛の移入  (三)占領地の青島牛の輸入 1青島牛肉の輸入の概略  2日本軍政下の青島屠獣場

 

第十章  戦時・戦後の統制と混乱

第一節  食肉は食卓に上らず 
(一)軍需優先の統制  (二)食肉小売への価格統制  (三)統制で食肉業界の混乱

第二節  敗戦直後の混乱の中で

(一) 食肉不足で統制と闇の狭間  (二)朝鮮特需と経済復興の兆し

 

第十一章  肉用牛の飼養と国際化

第一節  役肉用牛から肉用牛へ
第二節  乳用牛が国産肉牛に 
第三節  外来種も国産牛に
第四節  国際化時代と日本の肉牛

(一)食肉を求める食生活の変化  (二)食肉の輸入自由化での競合


第十二章  畜産・食肉の安全確保

第一節  BSE(牛海綿状脳症)感染の牛

(一)BSEは英国から蔓延  (二)人ではクロイツフェルト・ヤコブ病 1「海綿状脳症」は人も発症していた  2BSE牛の牛肉からの伝染なのか

第二節  日本でもBSEが発生した

(一)日本のBSE感染牛、第一号  (二)農林水産省の不手際が続く 1認識不足で対策は後手に廻る  2肉骨粉の安全対策ができてなかった

第三節  BSE防疫体制がスタート

(一)厚生労働省は全頭検査に踏み切った  (二)危険部位の除去と関連商品の製造

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