ビセンス・ナバロ(著)
ホアン・トーレス・ロペス(著)
アルベルト・ガルソン・エスピノサ(著)
吾郷 健二(訳)
海老原 弘子(訳)
廣田 裕之(訳)
280ページ
ISBN-10: 4806806528
ISBN-13: 978-4806806523
発売日: 2013/9/30
2500円+税
著者
ビセンス・ナバロVicenç Navarro (www.vnavarro.org; Twitter: @VicencNavarro) 政治学者、経済学者。バルセロナのポンペウ・ファブラ大学の政治学・公共政策学教授。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学でも教えている。28冊の著書があり、各国語に翻訳されている。国際学術誌で最も頻繁に引用されているスペインの5人の社会科学者の一人である。
ホアン・トーレス・ロペスJuan Torres López (www.juantorreslopez.com;Twitter: @juantorreslopez) セビーリャ大学応用経済学教授。多くの学術論文を執筆しており、20冊以上の著書と多くの共著が好評を得ている。
アルベルト・ガルソン・エスピノサAlberto Garzón Espinosa (www.agarzon.net; Twitter: @agarzon) 経済学を専攻した統一左翼の国会議員
訳者
吾郷 健二(あごう けんじ)
西南学院大学名誉教授 1970年京都大学大学院経済学研究科博士課程終了。経済学博士。 西南学院大学で長年、世界経済論、発展途上国経済論を講義。2010年定年退職。著書に『第三世界論への視座』(世界書院、1988年)、『グローバリゼーションと発展途上国』(コモンズ、2003年)、『農産物貿易自由化で発展途上国はどうなるか─地獄へ向かう競争』(明石書店、2010年)、『現代経済学』(共編著、岩波書店、2008年)その他がある。
海老原 弘子(えびはら ひろこ)
神奈川県出身。2000年秋から1年間滞在したスペインのバルセロナで反グローバリゼーション運動を目の当たりにしたのがきっかけで、スペイン語圏の新自由主義に反対する動きに興味を持つ。2008年からバルセロナ在住で地元企業に勤める傍ら、ブログ(http://ramonbook.wordpress.com/)とツイッター(@ramonbookprj)で現地の動きを記録・発信中。訳書に『チェのさすらい』(ラモン・チャオ著、トランジスタープレス、2011年)。
廣田 裕之(ひろた やすゆき)
1976年福岡県生まれ。1999年より地域通貨についての研究を始め、『地域通貨入門─持続可能な社会を目指して』(アルテ、2005年)、『シルビオ・ゲゼル入門─減価する貨幣とは何か』(アルテ、2009年)などを刊行。現在、スペイン・バレンシア大学の社会的・協同組合経済大学研究所(IUDESCOOP)による社会的経済の博士課程に在籍中。
世界のさまざまな部分で、力と富が働く人々から移動し、巨大な集中へと向かっている。財界と超富裕層の投資コンサルタント業界の経済文献は、世界システムが二つのブロックに分裂していることを示している。つまり、大部分破壊的で極めて浪費的な成長が資源の消費を領導する少数のとてつもなく豊かな人たちを利するようなグローバル社会で、巨大な富を持つ極めて重要な富裕階級とその他大勢の二つのブロックである。この後のブロックは、「豊かでない」人たち、しばしばグローバル「プレカリアート」と言われる巨大な多数派、「プレカリア」(不安定)な形で、生存している労働力で、ほとんど生存維持水準に到達していない何十億人もの人々を含む。 この展開は、自然法則とか経済法則とかのような非人為的な力の作用によるものではなく、それに味方する制度的構造内部の特定の意思決定の結果なのである。これらの意志決定とプランが固い決意を持った民衆の行動と動員によって逆転させられない限り、この状態は続くであろう。そのためには、権力が宿る不当な権威と抑圧的な制度を問題にする短期に実現可能な修正策とより長期の政策提案の双方を含むプログラムを民衆が持つことが必要である。したがって、オルタナティブが存在することを明らかにすることが重要である。(プロローグより ノーム・チョムスキー)
目次
日本語版へのまえがき……………9
プロローグ(ノーム・チョムスキー)……………15
はじめに……………19
第一章 世界危機の原因……………25
大不況……………26
「緑の芽」という嘘……………27
危機の表層的原因と本質的原因……………28
金融の惨憺たる結末……………29
サブプライムローンという詐欺……………30
崩 壊……………32
世界経済の危機と副次的な損害……………33
危機の根底にある原因……………35
経済の金融化と銀行の役割……………36
新自由主義……………39
不公平な所得分配と危機……………41
有毒な資本主義……………44
第二章 スペイン経済危機の特殊性……………45
偶然の一致と私たちの特殊性……………46
危機の原因となった生産モデル……………53
行き過ぎの時期、危機の勃発、景気後退……………61
第三章 解決しなければならないこと ─より公正で効率的な経済のための課題……………71
破られた約束……………72
同じことを続けて経済状況は悪化……………74
懸案の金融改革、避けられない改革……………77
必要な構造改革……………85
もうひとつの経済、もうひとつの社会関係、もうひとつの人間……………94
第四章 まともな雇用を創出するための条件……………97 失
業の原因と雇用創出のための条件……………99
危機における雇用と失業 ─何に失敗したのか、何を改めなければならないのか?……………105
労働市場の現実は何を教えてくれるのか?……………112
まともな雇用の創出を可能にする条件……………116
第五章 社会支出の不足という障害……………121
競争力の要因としての社会福祉……………122
福祉国家と危機……………123
スペインにおける福祉国家の脆弱さ……………124
スペインの社会的遅れの原因……………127
現在以上の予算で運営される福祉国家は 維持できないというのは事実なのか?……………128
社会的権利に対する不十分な支出……………129
第六章 雇用創出と経済回復のためには、 賃金の引下げか引上げか?……………141
賃金と競争力……………142
賃金の二つの役割……………143
賃金の引下げか、生産性の向上か?……………146
賃金と市場シェア……………148
競争力の低さは賃金のせいか?……………149
スペインの競争力の低さに対する経営者の責任……………151
すべての国が競争力を持てるわけがない……………154
所得の分配に関する国民協定の必要性……………156
労働賃金と賃金格差の推移……………157
企業の利益─これほどの増加はなんのため?……………159
所得協定と生産モデルの転換……………161
提案の実現性……………162
第七章 経済活動の別のモデルへの融資……………165
公的債務……………166
銀行融資システムの改革……………168
公共部門への融資……………175
赤字の資金調達および公的債務……………180
第八章 もうひとつの欧州、もうひとつの世界……………191
変更不能なものはない……………194
欧州─なぜ、こうなってしまったのか?……………196
欧州のための別の経済プロジェクト……………199
ユーロからの離脱?……………205
新自由主義的グローバリゼーションを超えて……………207
第九章 人間に仕え、自然と調和した経済……………215
深刻な欠陥……………216
人間第一……………218
生産と消費の別の様式、別の価値観……………220
すなわち、私たちは逆の思考方法を学ばなければならないのだ……………225
これはユートピアなのか? 社会は変えられるのか?……………226
もうひとつの世界は可能である……………228
必要な政治的変革……………230
第一〇章 一一五の具体的な提案……………235
訳者あとがき……………248