増補 十六歳の母
著 者 原田 瑠美子
四六判上製/224ページ
定価2400円+税
ISBN-13:978-4806807377 C0037
発売日:2020年5月30日
増補版にあたって
『十六歳の母』は「金八先生」と何か関係があるのか? という質問を幾度か受けたことがある。
「金八先生」とは一九七九年から二〇一一年まで断続的ながら三二年も続いたテレビの人気ドラマである。非行、不登校、いじめ、親子断絶など子どもたちが抱える様々な問題を武田鉄矢が演じる金八先生が生徒と一緒に考える学園ドラマだった。
その第一シリーズで中学生の妊娠、出産というテーマを取り上げて大きな話題となったので、『十六歳の母』とのつながりを連想したのだろうが、直接的な関係はない。
第一シリーズがスタートした一九七九年(昭和五四年)は、高度経済成長を終えて第二次オイルショックが起こり、学校では校内暴力が出始めたころである。そうした時代背景は共通しているが、『十六歳の母』の舞台となるのは都内の女子校である。
一九八一年の一一月のこと、担任クラスの生徒が妊娠し、結婚と出産を決意し退学を申し出てきた。当時は中高生の性行動は非行として捉えられ、「不純異性交遊」という言葉が使われていた。まして、女子校での「妊娠」はタブーであり、「純潔教育」が求められていた時代である。
当時三五歳だった私は、生徒の「妊娠」をどう考え、生徒たちに何を訴えたのか、そして生徒たちはどのように反応し、行動したか…
「愛と性」を生きることと結び付けて考える視点は「金八先生」と通じるところがあるが、女子校という環境下で、女性の自立と生き方を考えるH・R(ホーム・ルーム)へと発展させたところは本書の特徴といえよう。
初版一九八二年の増補版であるから、ずいぶん昔のことと思うかもしれない。まずはテレビドラマの再放送を見るような感じで読み始めてほしい。今の時代との違いに「昭和レトロ」を感じるところがあるだろう。しかし読み進めるなかで、今を生きる自分にも通じる問題があることに気付いてもらえたら嬉しい。(増補版へのまえがきより)
【目次】
増補版へのまえがき 3
1 生徒が妊娠した 9 2 二人の出会いと結婚 53 3 赤ちゃん誕生 77
4 二人の「愛」と「性」と「生」 109 5 雅子から学んだこと 129 6 セクシュアル・ライツを自分のものに 187
あとがき 207 増補版へのあとがき 210