『香港の反乱2019 抵抗運動と中国のゆくえ』訳注 2

投稿日時 2021-09-01 19:48:52 | カテゴリ: TOP

『香港の反乱2019 抵抗運動と中国のゆくえ』訳注 2

 

序章
<1> 駐香港連絡弁公室は、正式名称を「中央人民政府駐香港特別行政区連絡弁公室」といい、中国政府の香港における出先機関。以前は新華社香港支社と名乗っていたが、返還後の2000年以降は報道関連以外の業務を担う機関として改組した。一方、香港マカオ事務弁公室は国務院(最高行政機関)の機関で、国の香港マカオに関する事務を統括する。両機関は行政レベル的には同級だが、今回の人事で連絡弁公室の主任(トップ)が事務弁公室の副主任(ナンバー2)に任命されたことで位階関係が明確になった。
<2> 香港基本法 正式名称を「香港特別行政区基本法」という。前文、九章におよぶ本文、付属文書から構成されている。付属文書は、「香港特別行政区行政長官の選出方法」「香港特別行政区立法会の選出方法および表決手続」「香港特別行政区において施行される全国性法律」の三つである。香港基本法は、1990年4月に、第七期全国人民代表大会第三次会議において可決成立した。本書の著者は、香港基本法が英植民地主義から引き継いだ経済的自由放任の資本主義に基づくものであり、香港の民選議会の付託を受けていないとして、普通選挙で選ばれた憲法制定議会を招集して、基本法を再制定する必要があると主張してきた。
<3> 香港基本法二二条には、以下のように規定されている。
中央人民政府の所属各部門、各省、自治区および直轄市は等しく香港特別行政区の本法に基づいて管理する事務に干渉することはできない。中央各部門、各省、自治区および直轄市が香港特別行政区に機構を設立する必要がある場合には、香港特別行政区政府の同意と中央人民政府の認可を受けなければならない。中央各部門、各省、自治区および直轄市が香港特別行政区に設立するすべての機構とその人員は、香港特別行政区の法律を遵守しなければならない。香港特別行政区に居住する以外の国民が香港特別行政区を訪問する場合は認可の手続きを取らなければならず、そのうち香港特別行政区に定住する人数は中央人民政府の主管部門が香港特別行政区政府の意見を求めた後、確定する。香港特別行政区は北京に事務所を設けることができる。
<4> 時事通信は、この問題について、4月21日に次のように報じている。
「中国当局が香港社会への圧力を強めている中、林鄭月娥行政長官は21日の記者会見で、『中国政府の出先機関は香港事務への発言権を持っている』との見解を示した。従来の香港基本法(憲法に相当)の解釈とは異なる立場で、トップが中国の介入を正当化した。林鄭長官の発言は先週、中国国務院(中央政府)香港・マカオ事務弁公室と出先機関である香港連絡弁公室が相次いで、香港立法会(議会)の議事運営に注文を付けたことが背景にある。両弁公室は、立法会に対し『反対派が悪意をもって議事を遅らせている』と民主派議員を名指しで非難。正常化を促した。基本法二二条は『中央政府の所属各部門は香港特別行政区が管理する事務に干渉できない』と定めている。そのため民主派は、両弁公室の行為は二二条に反しており『一国二制度』を損なうものだと批判した。林鄭長官は21日、『両弁公室は中央を代表する機関で、香港事務を処理し監督する権限を与えられている』と説明。単なる『所属各部門』ではなく二二条の規定に該当しないとの解釈を示し、中国側に追従した。民主派らは、中国政府の関与がなし崩し的に強まる恐れがあるとみて警戒している。」
<5> 2019年8月から10月にかけての集会やデモに関連して、違法結集の呼びかけや無許可デモの容疑で15名が逮捕された。逮捕されたのは以下の人々である。民主党:李柱銘(弁護士、元立法会議員)、楊森(元立法会議員)、単仲偕(現区議、元立法会議員)、蔡耀昌、何俊仁(弁護士、元立法会議員)/社会民主連線:梁国雄(元立法会議員)、呉文遠、黄浩銘、陳皓桓/公民党:呉靄儀(弁護士、元立法会議員)/工党:李卓人(香港職工盟書記長、元立法会議員)、何秀蘭(元立法会議員)/街坊工友服務處:梁耀忠(現立法会議員)/區諾軒(前立法会議員)/黎智英(実業家、『蘋果日報』紙創始者)
<6> 李文亮 武漢の医師で2019年末に新型コロナウイルスの感染拡大をインターネットで告発した一人。当初、デマをまき散らしたとして警察から訓告処分を受けるが、直後に新型肺炎の症状がでて、2月に入り感染が確認され集中治療室で治療を続けるが、2月7日未明に死亡が確認された。享年34歳。3月に入り国家衛生健康委員会と人力資源社会保障部(厚生省)などから新型コロナウイルスの感染拡大の防止に努めながらも感染して亡くなった33人の医療関係者の一人として表彰され、4月には武漢市のある湖北省が貿易の第一線で働きコロナで亡くなった14人の一人として「烈士」(革命事業などで犠牲になった人物)として顕彰された。さらに同月、中国共産主義青年団(共青団)が「中国青年五四褒章」を授与するなどして、世論の批判を打ち消すことに追われた。
<7> オルタナ右翼 オルト・ライトともいわれ、従来の保守思想に代わる既存の秩序を否定する新しい右翼思想。レイシズム、反フェミニズム、反エリート主義などを特徴とする。
<8> カエルのぺぺ(英語で「Pepe the Frog」) ウェブ漫画「Boy's Club」から生まれたキャラクターで、2016年の米大統領選挙の時期までにオルタナ右翼によるユダヤ人などへの人種差別の象徴として広く使われるようになった。原作者は、当初は単なる「平和なカエル野郎」としてペぺを描いた。そのため、何度も当初のイメージの奪還を試みるも不発におわり、2017年にはペペを埋葬するシーンを描くことで、オルタナ右翼によるイメージの簒奪からぺぺの魂を取り戻した。香港では今回の運動のイメージキャラクターの一つとして若者から絶大な人気を受けたことで、当初の「平和なカエル野郎」として復活したともいえる。






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