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図説 病の文化史 高ヒット

図説 病の文化史―虚妄の怖れを糾す (図説シリーズ (1))

久保井 規夫 (著)
240ページ
ISBN-10: 4806805491
ISBN-13: 978-4806805496
発売日: 2006/12

 

久保井規夫(くぼい のりお) 1967年、香川大学教育学部を卒業し、大阪府公立学校教員として勤務。 「同和」(人権)教育研究団体の役員を歴任。2003年、摂津市立第二中 学校教諭を最後に退職。現在、桃山学院大学講師。APHC(アジア民 衆歴史センター)主宰。平和・人権の教育実践報告や著書は多数。『図 説 病の文化史 虚妄の怖れを糺す』『図説 食肉・狩漁の文化史』『絵 で読む 大日本帝国の子どもたち 戦場へ誘った教育・遊び・世相文化』 『絵で読む 紫煙・毒煙「大東亜」幻影 日本の戦争と煙草・阿片・毒煙』 (以上、柘植書房新社)『わかりやすい日本民衆と部落の歴史』『わか りやすい日本民衆の歴史と朝鮮』『朝鮮と日本の歴史』『江戸時代の被 差別民衆』『近代の差別と日本民衆の歴史』『戦争と差別と日本民衆の 歴史』『図説朝鮮と日本の歴史 光と影』『地下軍需工場と朝鮮人強制 連行』『カラー図版日本の侵略戦争とアジアの子ども』『教科書から消 せない歴史』『消され、ゆがめられた歴史教科書』(以上、明石書店) などの著作。

 

数多の人々を病の怖れの呪縛に巻き込んだ伝染病は、その時代の政治・宗教・生活文化と深く結びつく。それぞれの時代の世相の中で、伝染病という極限の状況を前に、為政者・宗教者・医学者の所業も露呈する。病を恐れ る呪縛の中で、民衆が苦しみ、救いと生き様を求める姿が赤裸々に映し出される。特に、軍事国家への民衆の従属が 義務付けられた戦前・戦時において、病者は、「役立たず」として祖国浄化のために「穢れ」として排除された。生 身の人間は、病と無縁ではない。ましてや、伝染病ならばである。その伝染病が、伝染力や病状が激しければ、ある いは、そのように偏見にとらわれておれば、「穢れ」と差別は一層強められたのである。「優生保護法」によって、病 者の「抹殺」「撲滅」さえ進めるという民族浄化がなされた。一方では、特定民族へのホロコーストを狙う、細菌兵器や、 生体実験のごとき、科学・人道を担う医学者が犯した「悪魔の飽食......七三一細菌部隊」が現出された。それは、今 もまかり通っている。先達が、病についてすでに著述してきた内容で良しとせず、私の歴史観を展開して、ここに「病 の文化史 虚妄の怖れを糺す」を記述して、世間に問う所以である。(はじめにより)

 

目次

病の文化史◆目次                                        

 

 

はじめに 病の「怖れ」の呪縛を解き放つ 11

 

第一章 疫病は祟りか罰か

第一節 死者の怨霊の祟り 13

(一)都を呪う早良親王(崇道天皇)

(二)全国で崇拝される天神様

(三)冥界魔王となりし崇徳院

第二節 荒ぶる疫神の罰 16

(一)疫病祓いの祇園会

(二)各地に祭られる牛頭天王

第三節 疫病を恐れ仏教に帰依する 18

(一)仏教伝来と疫病

(二)仏教による国家鎮護

第四節「憑き筋」「業病」とされ 19

(一)犬神筋・狐憑き ①取り憑いた迷信 ②犬神筋の家

(二)芸能歌曲の祖、蝉丸

(三)加持祈祷なるもの

 

第二章 疫病史を席捲した痘瘡(天然痘)

第一節 高熱と発疹の劇症 24

第二節 子を想う赤絵の祈り 25

第三節 種痘の始まり 26

第四節 種痘接種の中で 27

 

第三章 命定めの疫病、麻疹

第一節 麻疹も発疹から 29

第二節 養生が一番の療法 30

 

第四章 困った国際交流、梅毒

第一節 感染経路は花柳界 31

(一)ヨーロッパ伝来の性病とされるが

(二)症状からの病名

第二節 苦界に蔓延した梅毒 33

(一)惣墓へ投げ捨てられた娼妓

(二)生を見たがる馬鹿な役人

第三節 療法を会得に一世紀 37

(一)名医も非力を嘆く

(二)瘡守稲荷の小町娘、笠松お染

(三)療法に効果あり

 

第五章 上陸したコレラの猛威

第一節 幕末、開国動乱の最中に 40

(一)数日で死に至る恐怖

(二)西日本を席捲したコレラ

(三)安政コレラ、江戸を制覇

(四)疫神祓いと攘夷

(五)コレラに立ち向かった日本の医師

第二節 悪戦苦闘のコレラ防疫 44

(一)防疫反対のコレラ一揆

(二)頻発したコレラ一揆

第三節 政府が取り組んだ防疫の実態 47

(一)コレラ発生に対して

(二)啓発をしながらの防疫 ①各自の養生を求める ②避病院を忌み嫌うべからず ③患者を出した家庭

(三)恐れられたコレラの影で

(四)差別の上に差別を重ねた ①嫌がられる避病院は何処に建てたか ②吐瀉物・汚穢物の処理で差別が露呈 ③埋葬・火葬で、また差別が露呈

第六章 黒死病(ペスト)に震え上がった

第一節 慌てふためいた防疫 57

(一)死神ペストを前にして

(二)ペストが上陸した

第二節 最初の防疫体制 59

(一)鼠を駆除せよ

(二)鼠と蚤は感染源

第三節 防疫で露呈した差別 62

(一)天下御免の放火

(二)見込みで被差別地域を検疫

第四節 市街から消され、追われた人々 64

(一)近代都市の名の下に

(二)排除と支配の強化

 

第七章 伝染病が細菌兵器に

第一節「悪魔の飽食」、関東軍第七三一部隊 68

(一)細菌兵器の開発

(二)監獄を持った部隊

第二節 悪魔の人体実験 71

(一)悪魔となった医学者たち

(二)兵器として使用が前提である

第三節 悪魔は黒死病(ペスト)を使う 74

(一)地域の伝染病が重視された

(二)人体実験で細菌兵器を確定した

(三)「満洲」ペストは悪魔の胎動

第四節 実戦での細菌兵器 79

(一)中国での実戦使用

(二)第七三一部隊の暗影

 

第八章 平均寿命を縮めた結核

第一節 「死病」と恐れられた肺病 83

(一)結核は伝染病で死因第一位だった

(二)昔から根付いていた死病

第二節 国民に蔓延した結核 86

(一)「工業、五千人を殺す」女工を侵す結核

(二)蔓延する結核と政府の対策

(三)国民の衛生思想の涵養

(四)死を自覚した病者

第三節 戦争と結核と国民の健康 94

(一)健民健兵の施策 ①兵士に蔓延する結核 ②療養・治療は立ち遅れた

(二)戦時の挙国体制と結核 ①結核療養所は兵士優先 ②国民の体力向上と結核 ③貧しき結核患者の実態 ④戦時の結核撲滅の実体

(三)植民地でのお粗末な結核予防 ①台湾での結核予防 ②朝鮮での結核予防

(四)日本軍兵士を実験台とする ①「満洲」の陸軍病院から日本内地へ ②遠き「満洲」に死す軍属 ③戦車第三十連隊の初年兵たち ④保護兵に青標識を付する ⑤他の保育実験との違い

 

第九章 「業」「家筋」とされた頃の「癩病」者の歴史

第一節 発病は稀、完治するハンセン病 111

第二節 「業」と「功徳」の狭間(古代・中世) 112

(一)「癩病」記述の初見

(二)仏教の救済と皇室の「功徳」 ①「癩病」者への「功徳」 ②僧侶による救済

(三)「悪業」の報いとしての「業病」

(四)「癩病」者の生活

第三節 習俗差別と医療の狭間(近世) 119

(一)キリスト教の登場と「癩病」者 ①「癩病」者を救済した施療院 ②切支丹弾圧と「癩病」者の受難

(二)江戸時代における「癩病」者の生活 ①「非人」の習俗と「癩病」者 ②身分としての「癩病」者(三)「癩病」観の微妙な変化 ①「家筋」「血筋」の病として ②「癩病」の妙法なるもの

(四)「家筋」調べと「癩病」

第四節 近代初期の「癩病」者 133

(一)未だ病因も療法も確立せず ①「毒婦」高橋お伝と「癩病」 ②芝居「摂州合邦辻」 ③猟奇犯罪の「動機」とされた ④東アジアでの迷信・偏見

(二)維新の変動と「癩病」者 ①生業・居住を奪われた「癩病」者 ②貧民と共に収容された「癩病」者

(三)東京府養育院の「癩病」者 ①貧民救済と病者たち ②病者の中の「癩病」者

(四)政府に根強い遺伝・「家筋」説

(五)施策の外の「癩病」者たち ①良薬・名医を求めて ②宗教者の救済施設 ③寄り添う「癩病」者たち

 

第十章 法的隔離とハンセン病者

第一節 隔離施策の始まり 159

(一)国辱とされたハンセン病者 ①法規制への議会審議 ②英国女性、リデルの影響

(二)浮浪する病者の隔離・取締り ①法律第十一号「癩予防に関する件」 ②「癩部落」なるもの

第二節 隔離強化の国策 168

(一)収容隔離の強化と拡大 ①「癩予防法」への改定 ②強制収容による隔離

(二)「小島の春」の幻想 ①「社会浄化の戦い」とされて ②入園者の抵抗(長島事件)

(三)審判なき死の獄舎 ①特別病室(草津監禁所)の設置 ②五重扉、地獄の鉄鎖

第三節 戦争とハンセン病者 182

(一)「癩撲滅運動」の展開 ①「自由療養村」の殲滅②「自由療養村」草津の軌跡

(二)皇紀二千六百年の皇国「浄化」 ①優生思想と断種 ②断種手術を巡る虚実

(三)戦時下のハンセン病者たち ①病者に勤労奉仕を強いる ②飢えと症状悪化で死者が続出

(四)米軍政下とされた「琉球」の療養所 ①沖縄の「愛の村」 ②「大東亜三百万の癩者」 ③米軍政下のハンセン病者

第四節 旧植民地のハンセン病者 200

(一)朝鮮のハンセン病者 ①日本の「癩病」施策の導入 ②小鹿島の官立療養所 ③優生によるハンセン病者の抹殺 ④収容者への強制労働

(二)他の植民地でも ①外地におけるハンセン病療養所 ②台湾のハンセン病者

第五節「らい予防法」廃止と人権回復 214

(一)隔離・抹殺施策の継続 ①新たな「らい予防法」の成立 ②光田健輔の手紙の矛盾 ③「砂の器」を見ての涙 ④冤罪!藤本事件

(二)「らい予防法」廃止からの課題 ①「らい予防法」廃止の闘い ②人権侵害の責任を問う裁判

(三)政府が切り捨てている課題 ①植民地での加害責任を放棄 ②真相の究明と補償法の見直しを   ③闇に消された家族の被害 ④患者・元患者の市民権を

 

終わりに 235

参考図版・文献 238

表紙カバー絵 中扉絵 APHC所蔵 揚州国延筆「高橋於伝、後藤吉蔵殺害之場」「鉄嶺に於けるペスト死体解剖」明治四十三、四年南満洲ペスト流行誌附録写真帖(関東都督府臨時防疫部)

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