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書名:『共産党宣言』からパンデミックへ
副題:「歴史の終わり」の弁証法
著者:森田 成也
46判上製/340ページ
定価2800円+税
ISBN-13:9784806807513
発売日:2021年8月12日
著者:森田 成也(もりた せいや)
大学非常勤講師
【主な著作】『資本主義と性差別』(青木書店、1997年)、『資本と剰余価値の理論』(作品社、2008年)『価値と剰余価値の理論』(作品社、2009年)、『家事労働とマルクス剰余価値論』(桜井書店、2014年)、『ラディカルに学ぶ「資本論」』(柘植書房新社、2016年)、『マルクス剰余価値論形成史』(社会評論社、2018年)、『ヘゲモニーと永続革命』『新編マルクス経済学再入門』上下(社会評論社、2019年)、『「資本論」とロシア革命』(柘植書房新社、2019年)、『トロツキーと永続革命の政治学』(柘植書房新社、2020年)
【主な翻訳書】デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義』『<資本論>入門』『資本の<謎>』『反乱する都市』『コスモポリタニズム』『<資本論>第二巻・第三巻入門』(いずれも作品社、共訳)、トロツキー『わが生涯』上(岩波文庫)『レーニン』『永続革命論』『ニーチェからスターリンへ』『ロシア革命とは何か』、マルクス『賃労働と資本/賃金・価格・利潤』『「資本論」第一部草稿——直接的生産過程の諸結果』、マルクス&エンゲルス『共産党宣言』(いずれも光文社古典新訳文庫)、他多数。
本書は、理論と歴史と現在という三つの次元を往復しながらマルクス主義の古典を論じるシリーズの第三弾となる。最初が『ラディカルに学ぶ「資本論」』(二〇一六年)で、その次が『「資本論」とロシア革命』(二〇一九年)であり、本書がその三冊目である。……
世界を襲った新型コロナウイルスのパンデミックはあらゆる点で現代資本主義の脆弱性を示した。新自由主義による四〇年間に、先進資本主義諸国における人口当たりの病床数やICU病床数は半分から三分の一にまで減少し、ほとんど余裕のない状態に置かれた。……
だが今日における資本主義の問題は感染症だけではない。地球温暖化とそれに伴う大災害もまた、資本主義成立後の二〇〇年間につくり出され累積されてきた矛盾の発現でもある。……
資本主義は果たして人類と共存可能なのかという疑問が多くの人々の脳裏に浮かび始めている。若手のマルクス研究者である斎藤幸平氏が執筆した『人新世の資本論』(集英社新書、二〇二〇年)が発売からわずか半年ほどで二〇万部以上売れるという大ベストセラーになったのも、そうした危機感が背景にあると言ってもいいだろう。(本書序文より)
【主な内容】
序文
第1章 未来に向けた未完の宣言─『共産党宣言』の新訳によせて
はじめに
1、「共産主義の原理」から『共産党宣言』へ
2、『共産党宣言』の論理と展望
3、種々の特殊な論点――私的所有、児童労働、売買春、未来社会
4、『共産党宣言』新版への道
5、「最も翻訳しにくい文書」――『共産党宣言』各国語版に向けた紆余曲折
6、『共産党宣言』と日本
第2章 「社会主義か野蛮か」の起源とその現代性─『共産党宣言』からパンデミックへ
はじめに
1、ローザ・ルクセンブルクにおける「社会主義か野蛮か」とその起源
2、アンガス説の諸問題
3、エンゲルスのヨーロッパ戦争論における「全般的野蛮化」論
4、『共産党宣言』における「野蛮への逆戻り」論
5、マルクスとエンゲルスの根本思想としての「社会主義か野蛮か」
6、トロツキーのファシズム批判における「野蛮の生理学」
7、新自由主義下のコロナ危機と現代の野蛮
補論1 マルクスにおける反植民地主義的転換?─ドラポ―論文への異論
第3章 『共産党宣言』と現代世界─疫病、グローバリゼーション、永続革命
はじめに――四つのテーマ、二つのポイント
1、マルクス&エンゲルスと疫病の政治経済学
2、『共産党宣言』と資本のグローバリゼーション
3、『共産党宣言』と三つの永続革命論
補足1――マルクスとパリ・コミューン
補足2――グラムシ「獄中ノート」における二つの永続革命論
4、『共産党宣言』とプロレタリアートの変革能力
おわりに――ユートピアの復権に向けて
第4章 マルクスとアソシエーション─新しい神話
1、マルクス主義の「アソシエーション論的転回」?
2、未来社会の核心はアソシエーションか?
3、マルクス・エンゲルスのアソシエーション論の真の独自性
4、『共産党宣言』は国家集権的か? マルクスは後にそれを否定したのか?
5、エンゲルスは非アソシエーション的だったのか?
6、なぜ「アソシエーション」論がこれほど人気を博したのか
第5章 現代世界と資本主義の諸限界─新自由主義から現代家産制へ
1、コロナ危機が露呈させた三つの脆弱性
2、民主主義の劣化と現代家産制(ネオ家産制)
3、歴史的諸要因――新自由主義から現代家産制へ
4、構造的原因――資本主義の諸限界の昂進とその露呈
おわりに
補論2 二一世紀の危機とトロツキー─没後八〇周年によせて
第6章 トロツキー永続革命論の現代的意義─「歴史の終わり」の弁証法
はじめに――『トロツキーと永続革命の政治学』序文の問題提起
1、「歴史の始まり」と「歴史の終わり」――歴史のブルジョア的観点とマルクス的観点
2、『共産党宣言』から東西冷戦まで――「歴史の始まり」の弁証法
3、一九六八年革命から現代まで――「歴史の終わり」の弁証法
おわりに――永続革命と人類の未来
補論3 トロツキーの永続革命論とロシア・マルクス主義の遺産─レヴィ論文への異論