書名：歴史を見つめる─日韓の大切な人たちとともに

著 者：宮内秋緒

46判並製／232ページ

定価1800円+税

ISBN-13：9784806807599

発売日：2022年6月17日

■著 者　宮内秋緒（みやうち　あきお）

1974年生まれ、神戸出身
天理大学、韓国外国語大学校国際地域大学院卒業（修士）
訳書に「여성이 만드는 아시아」들린아침、2005年（原書「女たちがつくるアジア」、松井やより）（共訳）
「오키나와현대사」논형、2008年（原書「沖縄現代史」、新崎盛暉）（共訳）
歴史倶楽部・代表、LGBTQ＋アライ
韓国・京畿道在住

「冬のソナタ」に始まる韓流ブームは、それまで「近くて遠い国」だった韓国を一気に近づけ、その後もＫ–ＰＯＰや韓国ドラマの人気など、日本では今でもブームが続いています。
しかし一方では書店に嫌韓本があふれ、国同士の関係が悪化するたびに韓国人や韓国社会に対する非難がマスコミでも声高に報道され、ヘイト・スピーチの土壌をつくっています。そしてヘイトは日本に暮らす朝鮮半島ルーツの人たちに向けた現実の攻撃となってあらわれ、在日朝鮮人集住地域の京都ウトロでの放火事件にみられるように、ヘイト・クライムの様相をみせてきているように思います。
私の祖国であり子どもたちの一方のルーツである日本社会に差別が蔓延し、少数者を攻撃していることを伝え聞くにつれ、とても悲しく怒りを感じます。差別は「知らない」「知ろうとしない」ことを温床として起こります。まず歴史、そして現実社会の問題をしっかりと認識することが不可欠です。（おわりに-より）

目次

はじめに
第１章 「歴史」の鏡をのぞきみる
Ⅰ．古代・中世の朝鮮半島と日本の交流と対立
渡来の人─朝鮮半島から先進文明を伝えた人たち／白村江の戦い─古代日本大ショック／新羅─朝鮮半島統一を成し遂げた古代国家／奈良のユネスコ世界文化遺産と朝鮮／言葉でつづる日本と朝鮮半島のつながり／元寇─高麗の抵抗と「神風」／倭冦─越境する人びと／木綿物語／新安船─中世の海をつないだ貿易船／壬辰倭乱─四〇〇年後の今も身近な「被害」／朝鮮通信使─善隣友好の使い／象─歴史の渦のなかで
Ⅱ．侵略と植民地支配の歴史をまっすぐに見る
日清戦争─目的は朝鮮／明成皇后暗殺─韓国では誰もが知る侵略史上の悲劇／３・１独立運動─民族解放を求めて／創氏改名─皇民化政策の総仕上げ／浮島丸事件と朝鮮人強制連行・労働／日本軍「慰安婦」問題─日本軍性奴隷制度
Ⅲ．解放と分断、独裁と民主化─韓国の現代を知る
済州島４・３事件─住民大虐殺と日本への脱出／朝鮮戦争─特需による復興と再軍備／米軍基地村「慰安婦」─軍国主義と女性／４・19─李承晩政権を倒した民衆の力／日韓条約─戦後補償は終わったのか／ベトナム戦争─韓国と日本の戦争加担／光州事件─民主化を求めた民衆の闘い／六月民主抗争─継承される民主化への思い

第２章 あの人、この場所
Ⅰ．朝鮮・韓国に生きた人びとと日本    
世宗と蔣英實─名君と偉大な発明家／安重根と伊藤博文─日韓で逆転する人物評価／朝鮮独立運動家─国を守り闘った人たち／朴烈と布施辰治─朝鮮の英雄と人権派弁護士／浅川巧─忘憂里墓地に眠る「誠実の人」／徳恵翁主と李方子─日韓のはざまを生きた皇族／孫基禎─五輪マラソン金メダリスト／尹東柱─空と風と星と詩／李仲燮─日韓の歴史に翻弄された画家／田内千鶴子─韓国孤児三〇〇〇人の母／日本軍「慰安婦」被害者─その存在と証言／金福童さん─人権・平和運動家
Ⅱ．場所から見えてくる歴史
白頭山─民族の聖地／景福宮と光化門─朝鮮王朝の正宮に刻まれた支配の傷跡／釜山─港町に残る日朝の歴史／群山─米収奪の拠点／大阪・鶴橋─在日朝鮮人集住地と韓流の聖地／中国の旅─独立運動の足跡を追って

第３章 暮らす、生きる─韓国社会の一員とし
Ⅰ．「負の歴史」にどう向き合っていくのか
なぜ「負の歴史」を学ぶのか／歴史を知り、思いに触れ、不安を取り除く─日本出身のお母さんたちへ①／正直な気持ちで思いを共有する─日本出身のお母さんたちへ②／韓国「併合」は正しかったのか／『火垂るの墓』─加害の歴史を直視すること／日本は本当に謝ったのか／自分の問題として／子どもたちと一緒に読み、歴史を学ぶ
Ⅱ．歴史の「被害者」を思う
日本軍「慰安婦」問題、少女像、そして映画『鬼郷』／サンフランシスコ市との姉妹関係を解消した大阪市／韓国人被爆者、そしてオバマ大統領の広島訪問
Ⅲ．日本のナショナリズムと差別
旭日旗、何が問題なの？─「鬼滅の刃」から／靖国神社問題─政教分離、歴史認識と合祀／関東大震災、阪神・淡路大震災、東日本大震災、そして熊本地震／ヘイトスピーチ─差別的憎悪表現
Ⅳ．領土問題・分断・とり残された人びと
独島─領土問題／サハリン韓人、ロシア・中央アジアの高麗人／平昌冬季オリンピック─南北合同チーム結成に思う／ＢＴＳの「原爆Ｔシャツ事件」
Ⅴ．少数者の立場で「多文化・韓国」を生きる
韓国の外国人、多文化政策／クィアフェスティバル参加─少数者と共に多文化を生きる／新型コロナウィルス流行に思う─病気と排除／外国人住民もともに生きる韓国社会に！／韓国・コロナ対策─多文化当事者として
Ⅵ．在日韓国・朝鮮人とともに    
私と在日朝鮮人・歴史倶楽部／在日韓国・朝鮮人─日本の侵略が残したもの／朝鮮学校と日本、そして韓国／仲間─共に日本社会を生きる在日朝鮮人と私たち

おわりに