ホーム > 書籍一覧 > 2025 > 中国革命論における民主主義と社会主義
書名:中国革命論における民主主義と社会主義
サブ:陳独秀、瞿秋白、毛沢東を中心に
著者:江田 憲治
A5上製/380頁
定価4000円+税
ISBN-13:9784806807681 C0030
発売日:2025年3月4日(予定)
初期(少なくとも中国共産党の最初の一〇年間)の中国共産主義者にとって、〈民主主義〉は、指導者と党員(場合によってはシンパを含む)が党としての意思を形成し、これに参与する際に機能を発揮した組織原理=党内民主主義でもあった。この一〇年間にあって党としての意思決定は、絶対的な権力を獲得した毛沢東やそれ以後今日に至る指導者たちに想定できるような、党の〈最高指導者〉が一元的に掌握するものではなかった。……党の全国大会や中央委員会はしばしば――今日では全く想像もできないレベルでの、指導部に対する批判と反批判の表明を伴いながら――参加者に開かれた論争の場となっていた。……例えば、記録が明確に残る第3回・第6回・第7回全国大会での党代表の見解表明と論争が如何なるものであり、それがどう決着していったのかが、従前検討されることはなかったのである。(本書「結語」より)
江田 憲治(えだ けんじ)
1955年、三重県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導修了退学(文学修士)。京都産業大学外国語学部、日本大学文理学部、京都大学大学院人間・環境学研究科の各教授職を経て、京都大学名誉教授、明治大学兼任講師。著書に『五四時期の上海労働運動』(同朋舎出版、1992年)、共著・共訳書に『中国近現代論争年表』上・下(竹内実編、同朋舎出版、1992年)、『在華紡と中国社会』(森時彦編、京都大学学術出版会、2005年)、『周恩来伝』上・中・下(金冲及主編、阿吽社、1992-93年)、『陳独秀文集3 政治論集2 1930-1942』(平凡社、2017年)等。
【主な内容】
序に代えて 本書の問題意識
第1章 五・四運動の衝撃と中国共産党の成立──初期社会主義者の思想的軌跡
はじめに――毛沢東言説の批判を出発点として
(1)五・四運動と上海ストライキの展開
(2)上海ストライキの〈衝撃〉と知識人
(3)陳独秀の場合――労働組合とコミューン(一九一九年) 30
(4)陳独秀の転換――労働者への接近(一九二〇年)
(5)陳独秀におけるマルクス主義受容とその特徴
(A)講演「私の中国政治解決方針」(『時事新報』一九二〇年五月二十四日) 44 (B)論説「政治を語る」(『新青年』第八巻第一号、一九二〇年九月一日)
おわりに――陳独秀における「プロレタリア独裁」と民主主義
第2章 陳独秀の「国民革命論」と国共合作──民主主義革命から社会主義革命へ 77
はじめに――中国共産党創立期の新たな課題
(1)陳独秀の〈連続二段階革命論〉の提起――一九二二年
(2)陳独秀の国民革命論と第三回全国大会「国共合作論争」――一九二三年前半
(3)陳独秀「中国国民革命と社会各階級」(一九二三年四月)の再検討
(4)国共合作下の国民革命はどの階級が指導するのか? ――陳独秀らの「解答」
(5)国共摩擦下の陳独秀の革命指導
おわりに――国民革命の帰趨と陳独秀批判の意味
第3章 瞿秋白におけるトロツキズムとスターリニズム──中共理論家の役割とその悲劇
はじめに――瞿秋白再評価の課題
(1)中国社会の階級分析と国共合作の正当化――一九二三年前半
(2)革命の直接移行論――「民治主義から社会主義へ」(一九二三年九月)
(3)五・三〇運動期におけるヘゲモニー争奪論――一九二五年
(4)北伐戦争を巡って――プロレタリア主導の革命戦争(一九二六年)
(5)コミンテルンの「非資本主義的発展」論と十二月決議論争(一九二七年)
(6)瞿秋白の彭述之批判――『中国革命中の争論問題』(一九二七年四月)
おわりに――中共指導者としての瞿秋白
第4章 中共党史における糾弾用語──「二回革命論」言説はどのように生まれたのか?
はじめに――中国共産党の糾弾用語の学習と受容
(1)中国共産党研究史における「二回革命論」
(2)「二回革命論」言説の系譜㈠――瞿秋白・蔡和森
(3)「二回革命論」言説の系譜㈡――李立三・蔡和森・鄧中夏
おわりに――陳独秀の「二回革命論」言説克服の課題
第5章 中共党史における党内民主主義──意思決定のあり方と論争の所在を中心に
はじめに――「論争の党」としての中国共産党
(1)党内民主主義の初相――一九二一~一九二七年
(2)党内民主主義の展開――一九二七~一九二八年
(3)党内民主主義の変容――一九二八~一九三〇年
おわりに――党内民主の行方と毛沢東独裁
第6章 中共党史における都市と農村──「農村による都市包囲」論の提起を巡って
はじめに――「都市中心」論と「農村による都市の包囲」論
(1)都市政党の農村展開――陳独秀期
(2)都市暴動と農村暴動――瞿秋白期
(3)都市中心と農村包囲――李立三期
おわりに――「農村による都市の包囲」論を提起したのは毛沢東か?
第7章 毛沢東「新民主主義論」の成立──指導者言説はどのように「聖典」となったのか?
はじめに――「聖典」の主張と歴史的事実
(1)一九三八年の「五・四」記念言説
(2)一九三九年の「五・四」記念言説
(3)「新民主主義論」の成立要因
おわりに―――「新民主主義論」の「聖典」化
第8章 再び、陳独秀について──中国トロツキー派運動と陳独秀の「最後の論文と書信」
はじめに――「生涯にわたる反対派」
(1) トロツキスト指導者として──上海期(一九三〇年三月~一九三二年十月)
(2)収監下での思索と主張──南京期(一九三二年十一月~一九三七年八月)
(3)釈放後の公然言論――武漢・重慶・江津時期(一九三七年九月~一九三八年十月)
(4)トロツキー派との論争と最後の試み(一九三八年十一月~一九四二年五月)
おわりに―――陳独秀思想における民主主義と社会主義
結語
事項索引
人名索引