ホーム > 書籍一覧 > 歴史・地理 > 関東大震災 史料が証す戒厳令下の大虐殺の真相─朝鮮人・中国人・社会主義者の犠牲
書名:関東大震災 史料が証す戒厳令下の大虐殺の真相─朝鮮人・中国人・社会主義者の犠牲
著者:久保井 規夫(くぼい のりお)
A5並製/口絵カラー8頁/本文280頁
定価4000円+税
ISBN-13:9784806807735
発売日:2024年9月1日
先達の努力によって、政府関係機関が所蔵し、保管が義務付けられている文献史料には、朝鮮人虐殺の真相を示し、国家責任を明示する内容のものも数多くあることが発見された。政府は、責任逃れのために、それらの文献史料を非開示扱いにして隠蔽している。そのような政府の姑息な誤魔化しを許さないために、虐殺の真相と官憲の責任を明示した公史料・文献の存在を情宣し、周知の事実として歴史に位置づける取り組みが必要である。地方自治体が保管している関連の公文書で公開された場合もある。本書は、新たに発見された著者所蔵の公史料とともに、これまで各書に分散していた史料・文献を整理して検証・解説を加えて、「史料が証する」として、一冊にまとめたものである。(あとがきより)
久保井 規夫(くぼい のりお)
香川県仲多度郡琴平町出生。香川大学教育学部卒業。大阪府公立学校教員。同和・人権教育研究協議会の役員歴任。私立大学教員。歴史学名誉博士。アジア民衆歴史センター主宰。領土教育研究会理事長。
著書多数。例えば、「教科書から消せない歴史……慰安婦削除は真実の隠蔽」「消され歪められた歴史教科書」「絵で読む 大日本帝国の子どもたち」「日本の侵略とアジアの子どもたち」「絵で読む 紫煙・毒煙、大東亜幻影」「図説 朝鮮と日本の歴史 光と影(前近代編)」「図説 朝鮮と日本の歴史 光と影(近代編)」「わかりやすい日本民衆と朝鮮の歴史」「入門 朝鮮と日本の歴史」「地下軍需工場と朝鮮人強制連行」「わかりやすい日本民衆と部落の歴史」「入門 日本民衆の歴史」「江戸時代の被差別民衆」「近代の差別と日本民衆の歴史」「戦争と差別と日本民衆の歴史」「図説 食肉・狩漁の文化史」「図説 病の文化史」「図説 竹島=独島問題の解決」「図説 史料に基づく釣魚(尖閣)諸島問題の解決」「関東大震災百周年追悼 史料が証す戒厳令下の大虐殺の真相 朝鮮人・中国人・社会主義者の犠牲」etc
【主な内容】
はじめに……史料は真相の証である
⑴ 政府答弁「調査しても記録が無い」を諫める
1.日弁連「勧告」「調査報告書」
2.「非開示=記録が無い」の不誠実
⑵ 新史料「警視庁㊙通達綴」等による補完
Ⅰ.大震災時に於ける朝鮮人の虐殺
⑴ 日本人被災者が朝鮮人被災者を殺戮したジェノサイド
1.東京、横浜も瓦礫の焦土と化す未曽有の大震火災
2.軍隊の出動と武装した自警団
3.虐殺事件の責任から逃避する官憲
⑵ 朝鮮人虐殺を否定する偏向に屈した神奈川県教委
⑶ 歴史を改竄し、被害者を冒涜した工藤氏の著作
⑷ 史料を正しく分析し、虐殺の真相に迫らねばならない
Ⅱ.追悼を妨害する民族差別者の蠢動
⑴ 都知事は、朝鮮人犠牲者への追悼文を拒否した
⑵ 追悼式典を妨害するヘイト団体の登場
Ⅲ.虐殺犠牲者数は如何に把握されたのか
⑴ 政府・官憲は、虐殺事件・調査の責任から逃避した
⑵ 戒厳令下に於ける軍隊の殺戮は免責された
⑶ 統制と妨害で、朝鮮人虐殺の調査は困難を極めた
1.「独立新聞」に掲載、朝鮮罹災同胞慰問班の調査A
2.吉野作造氏に託された朝鮮罹災同胞慰問班の調査B
3.司法当局による自警団に対する捜査・立件の記録
4.全く隠蔽された軍隊による朝鮮人虐殺の記録
5.朝鮮総督府の震災弔慰金、戦後韓国の調査記録
a.弔慰金を渡された830名の遺族名簿は? /b.戦後、韓国李承晩政権による調査資料
⑷ 虐殺の証言が封じられ、遺体が焼却・隠蔽された
1.大震火災の死者は、どのように処置されたか
2.虐殺された朝鮮人死体は率先して焼却隠蔽された
3.死体写真は禁止、焼却隠蔽の実相
4.死体集積人数が記載された公地図の存在
Ⅳ.流言蜚語と「戒厳令」下の大虐殺
⑴ 警察体制の瓦解と治安の危機
1.内務省官憲からの「戒厳令」要請
2.「暴動」の嘘と「戒厳令」の施行
3.国会で、デマを流布した官憲の責任が問われた
⑵ 戒厳軍隊の出動と殺気立つ自警団
1.戒厳軍の配置と活動
2.「朝鮮人暴動」のデマと人心不安
3.「不逞」朝鮮人から「順良」への取り繕い
⑶ 強制収容された朝鮮人たち
1.凄まじい殺戮から検束・収容へ
2.「順良な」朝鮮人と相愛会の「同化」
3.要視察者に加えて要注意者をブラックリストに!
Ⅴ.言論統制下で新聞はどう報じたか
⑴ 拡散された「不逞」朝鮮人のデマ
⑵ 官憲・戒厳軍の責任は自警団に押し付けられた
⑶ まやかしの検挙・裁きで「処置済み」を謀る
Ⅵ.隠された、官憲・軍隊による朝鮮人虐殺の実相
⑴ 公記録「震災警備の為兵器を使用せる事件調査表」
⑵ 「朝鮮人は引きずり下ろされ、白刃と銃剣下に倒れていった」
⑶ 「朝鮮人を兵隊が叩き殺しているぞっ!」
⑷ 銃剣で突き殺し、死体は側の兵士が積み重ねた
⑸ 警察は、自警団による朝鮮人虐殺を野放しにした
1.警察署の貼紙「不逞鮮人の暴動を警戒せよ」
2.㊙通達「警察官は、不逞鮮人の真偽を言わザル」
Ⅶ.自警団による朝鮮人虐殺の実相
⑴ 検挙された朝鮮人虐殺の犯罪は一部に過ぎない
⑵ 埼玉県本庄事件;移送が妨害され、警察署が襲われた
⑶ 埼玉県神保原事件;トラックで移送中の朝鮮人を襲撃した
⑷ 埼玉県熊谷事件;喊声を上げて朝鮮人に襲いかかった
⑸ 埼玉県「通牒」;「不逞鮮人へ一朝有事の対策を講じよ」
⑹ 群馬県藤岡署事件;保護されていた朝鮮人を惨殺
⑺ 千葉県船橋事件;護送中の朝鮮人たちを襲撃した
⑻ 千葉県我孫子町自警団は、逃走の朝鮮人を惨殺した
⑼ 海軍の無線所長が「朝鮮人は殺してもいい」と言った
⑽ 横浜「警報で自警をする。庭先に死体がそのまま放棄」
⑾ 横浜市中村町、「天下晴れての人殺しだからね」
⑿ 白髭橋で見た朝鮮人虐殺の惨状
1.「何組もの朝鮮人が縛られて死んでいた」
2.朝鮮人を殺すたびに「万歳!万歳!」
⒀ 御蔵橋;焼き殺して、川へ放り込んだ」
⒁ 月島、「針金で縛って、石炭の炎の中へ放り込んだ」
⒂ 千田是也、「千駄ヶ谷で朝鮮人とされて殺されそうになった 」
⒃ 千歳烏山事件;神社の椎木植樹と虐殺の弔い
Ⅷ.朝鮮人たちを守った日本人がいた
⑴ 神奈川県鶴見警察署長「収容した朝鮮人・中国人たちを守った」
⑵ 千葉県丸山村「押し掛けた暴徒から朝鮮人を村ぐるみで守った」
⑶ 神奈川県田島町「町として神社境内に朝鮮人たちを匿った」
Ⅸ.中国人虐殺の実相を直視する
⑴ 仁木ふみ子氏が進めた日本側の調査・研究
⑵ 労働者たちが狙われた大島町事件
1.「この屍体は、朝鮮じゃなくて、支那だよ」
2.多くの中国人虐殺と強制収容
3.帰国者の証言に基づく明晰な調査
⑶ 戒厳軍に暗殺された王希天氏
1.愛国者にして労働者の支えであった
2.軍・官憲は、暗殺しながら「行方不明」と誤魔化した
⑷ 今や、軍隊の犯罪だったと露呈している
1.大島町事件;戒厳軍「全部殺害、支那労働者の説」
2.王希天暗殺;「戒厳軍の旅団・連隊幹部の裁可による」
a.久保野一等卒の日記/b.遠藤中将の日記
3.「仁に仇をなす」誤りを重ねるのか
a.中国は、誠意ある震災救援を行った/b.わずかな死傷者?と賠償金の不履行 /C.日本政府は、公約と責務を守らねばならない
Ⅹ.社会主義者・労働運動家の拘束と虐殺
⑴ 亀戸事件;警察署内で労働運動家たちが殺害された
1.労働運動家も「主義者」として拘束された
2.「騒擾罪」をでっち上げられ、労働運動家は虐殺された
3.凄惨な虐殺は目撃された
4.荒川河川敷の虐殺死体は、掘り出され隠蔽された
⑵ 甘粕事件;社会主義者大杉栄、伊藤野枝らの虐殺
1.官憲・軍部は、民主運動、社会主義を敵視した
2.憲兵が、大杉栄、伊藤野枝を拉致・惨殺した
3.殺害者甘粕大尉を「憂国の士」と称える軍法会議
⑶ 朴・金子大逆事件;狙われた朝鮮人の社会主義者
1.特高警察に「要視察」とされた独立運動家・社会主義者
2. デマ「朝鮮人・主義者が暴動」のスケープゴートにされた
3.法廷陳述で、天皇制軍国主義を批判した
Ⅺ.新たに見据える虐殺事件の真相
⑴ 習志野連隊が朝鮮人を自警団に渡し殺させた
1.虐殺された死者は何千人、拘束は一万六千余人
2.「村で収容所の朝鮮人を殺した」証言は事実であった
3.「おかしいようなのは、引っ張り出して殺した」
⑵ 福田村事件、虐殺された行商人の一行
1.「朝鮮人だけでなく、日本人も殺されたのです」
2.裁判は、「不逞」朝鮮人の誤殺事件として扱われた
3.よみがえった事件は残酷・悲惨そのものだった
4.被害者側の生存者の証言が明るみに出る
5.部落・民族・排外の差別が交錯した虐殺事件
⑶ 映画「福田村事件」を批判する
1.民族差別に、よそ者排除、部落差別が加わった事件
2.映画「福田村事件」を観た人、観る人へ
3.映画「福田村事件」上映にどう対処すべきか
⑷ 木本事件、自警団に襲撃された朝鮮人労働者の飯場
1.木本隧道、「我が町の栄えゆく一歩」
2.追悼碑から被害者の立場を知る
3.木本事件の経過(地方裁判所「予審決定」1926.5.3を参考)
4.朝鮮人虐殺を「義挙」「町の為」とされた差別
a.「我知らずブルブルと震えていた」 / b. 当時の新聞報道はどうであったか /
c.大震災での朝鮮人差別は根付いていた
5.「差別する人の心が啓かれることを祈る」
⑸ 水平社と関東大震災
1.大震災時に於ける水平社の動向
2.官憲警察に要視察団体として扱われていた
Ⅻ.追悼は断裂を糺す架橋となる
⑴ 民衆責任の自覚に根ざす追悼を
⑵ 虐殺された無念を刻んだ追悼碑・墓碑
1.本庄事件の朝鮮人犠牲者の追悼碑
2.虐殺された朝鮮飴売りの墓碑
3.片柳事件;遺族まで辿り着いた墓碑
あとがき